ギャンブルがやめられないのは脳が原因?危険な依存症と脳のメカニズム
脳には危険を冒しても、より高い成果を得ようとする機能がある。
世界には、冒険家のような一般人では考えもつかない
行動をする人がいます。
世界の最高峰を何度も征服したり、世界一高いビルに
命綱なしでよじ登ったり、鎖で縛られた中を脱出したりします。
しかし、これらの冒険家の脳ばかりではなく、
そもそも生物の脳には、危険を冒しても、より高い成果を
得ようとする機能があるようです。
マウスによる実験で分かった冒険する脳
東北大学の飯島敏夫教授らが、昨秋にマウスによる実験に
よって興味深い研究結果を発表しました。
マウスの前に、ペダルを一回踏むと必ず2滴の水が出るレバーと
一回踏むと4滴の水が出るが、50%の確率で水が全く出ない
レバーを配置した実験を行った所。
なんと確実に2滴の水が出るレバーよりも、50%の確率で、
4滴の水が出るレバーを選ぶマウスが1・7倍も多かったのです。
これは偶然ではなく、脳の「島皮質前部」に危険を冒してでも、
より大きな成果を得ようとするメカニズムが
あるからだそうです。
島皮質前部とは、どのような器官なのか?
島皮質には、飢えや渇望といった身体状態を作りだし、
食べ物や薬物への衝動を産み出す器官です。
特に、コカインやアルコール、アヘン、ニコチンの
ような成分を薬物依存者が必要とした時の反応では、
島皮質前部が活動しています。
生物は、生存の為に内部から突き動かされるような
衝動を感じて、体を動かすという事があるのです。
太古の昔、生物はただ待っていれば餓死してしまうより
方法がないという厳しい自然に放置されていました。
これが、リスクを冒してもより大きな成果を得ようとする
行動に生物を、駆り立てると考えられるのです。
この衝動には島皮質が大きく関わり、実際にニコチンの
依存症を持つ患者が、島皮質で脳卒中を起こしてしまうと、
ニコチンを欲するという衝動が全く無くなってしまう
という結果も報告されています。
依存症をも起こしてしまう島皮質前部
このような島皮質前部の働きは、マウスのみではなく
生物全般、人間にも見られるといいます。
わずかな元手で大きな成果を上げられるもの、例えば
ギャンブルが、この図式に当てはまります。
パチンコや競馬、競輪、もしくは株式への投機のような
必ずしも儲かるわけではないけれど、
当たれば数倍の儲けを産む。
このような射幸心をあおるようなギャンブルは、人間の
冒険心を刺激して人を呼び込むシステムなのです。
一度の成功体験が、依存症をより強固にしてしまう。
いくら、島皮質前部の働きによって、冒険心を
刺激されていても、ギャンブルで大敗してお金を
失えば痛い目を見た、というイメージが強く残り、
さらにギャンブルにのめり込むのをおさえる力が働きます。
しかし、初回でギャンブルに勝利して大金が
転がり込んでしまうと、島皮質に成功体験が強く
刻み込まれてしまいます。
これにより、ギャンブルに対して強い依存症が発生し、
負けても負けても、大金をつぎ込むという悪循環になります。
自分にも冒険心があるという事を自覚してギャンブルは慎重に
一度、ギャンブル依存症になってしまうと、抜けだす事は
容易ではありません。
ギャンブルのみではなく、タバコやアルコールの
ようなものも同じです。
よく、依存症におちいる人は精神面が弱いんだというような
コメントを見かけますが、脳の中に冒険を求める機能が
ある以上、誰であっても少ない力で最大の効果を得ようとする
精神の働きは存在すると思わなければいけません。
自分にも依存症におちいる可能性があると自覚して、
本当にこれでいいのか?と自分を自重する事を
忘れないようにしましょう。