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急性骨髄性白血病の治療に期待できる低分子化合物が発見された!新薬の早期開発に期待が高まる




再発を繰り返す白血病の原因を突き止めた研究

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ガンの治療技術は、近年、技術の進歩が著しい分野です。

この背景には、日本人の2人に1人がガンで命を落とす
という我が国の現状があります。

しかし、同じガンでも治療がよりやさしいガンもあれば、
治療が難しいガンも存在しています。

そのようなガンの中でも、治療が困難とされる再発しやすい血液のガン
である急性骨髄性白血病を治療できるかもしれない、
新薬に利用できそうな化合物が発見されました。

 

白血病幹細胞を死滅させる化合物

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理研の免疫・アレルギー科学総合研究センターヒト疾患モデル研究グループ
の石川文彦グループディレクターらの研究によると、

この化合物は急性骨髄性白血病の中でも、
最も状態の悪い患者に投与する新しい治療薬として開発が期待されます。

石川氏らの研究によると、
急性骨髄性白血病の中の「白血病幹細胞」が
白血病の再発を繰り返す主犯だと言います。

「白血病幹細胞」は、抗ガン剤に耐性を持ち、骨髄と骨の境界に潜み、
活動を再開しては、多くの白血病細胞を造り出しています。

石川氏らのグループは、この「白血病幹細胞」で働く
さまざまなたんぱく質を研究し、

細胞の増殖に関わるリン酸化酵素にターゲットを絞り、
もっとも強く活動を抑える低分子化合物
「RK-20449」を特定しました。

 

マウスに投与する実験によって効果を確認

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石川氏らの開発したRK-20449は、
試験管内の「白血病幹細胞」を低濃度で死滅させただけに限らず、

ヒトの白血病モデルマウスに単剤で投与しても
「白血病幹細胞」に対して有効でした。

 

遺伝子異常で発生する白血病に特に効果を発揮

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特に、「Flt3」という遺伝子の異常により抗ガン剤に
抵抗性を示す、悪性度の高い白血病例では、

数週間毎日投与すると、マウスの血液中から
全てのヒト白血病細胞がなくなり、

2カ月後には骨髄にある「白血病幹細胞」と
白血病細胞をほぼ全て死滅できたそうです。

 

急性骨髄性白血病とは

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急性骨髄性白血病が発症すると、
骨髄では赤血球、白血球、血小板といった
正常な血液の生産ができなくなり、貧血状態になります。

赤血球が減少すると酸素を運ぶ事が出来なくなり、
貧血や顔面蒼白、全身にわたるダルさ、

少しの動きでも心臓のドキドキが止まらなくなったり、
息切れが起きたりします。

また、白血球の減少は免疫を低下させるので、
感染症を起こしやすくなります。

血小板の減少も同時に起こりますので、
怪我をしても血が止まりにくくなり、
内出血によるアザや歯茎からの出血という症状もでます。

急性骨髄性白血病が進行すると、
骨や関節の痛みという症状もあらわれてきます。

さらに、脾臓では白血病細胞がいっぱいになり、
脾臓の肥大が起こります。

この急性骨髄性白血病に感染させたマウスに、
従来の抗ガン剤を投与しても、
貧血と脾臓の肥大には改善が認められませんでした。

しかし、新開発のRK-20449を6日間毎日
投与したところ、貧血及び脾臓の肥大が改善しました。

さらに52日間の投与では、
血液中で白血病細胞が再び増加する事はなく、
骨・脾臓ともに正常に近い外観を示したそうです。

 

従来の抗ガン剤では対応できなかった分野に期待

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ガンは治療しても再発する可能性が高い病気です。

そうなると抗ガン剤治療を
継続していかなければいけなくなります。

この抗ガン剤は人にもよりますが、

副作用が強い人になると、髪の毛が抜けたり、
嘔吐や体調不良、筋肉の痛みなど、
様々な苦痛が出る事でも知られています。

新しい治療薬を投与する事で、中々退治できなかった
「白血病幹細胞」が根絶できるのであれば、

ガンサバイバーとして日常生活を送っている人にとっても、
嬉しい知らせになりそうです。





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2013年5月3日 | カテゴリー:学会・研究

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