痛みの度合いが相手に伝わる?痛みを映像化する技術がアメリカで開発
痛みをビジュアルで確認する技術が開発された
どのような名医でも現在、知る事ができないのが、
患者がどの程度の痛みを訴えているかという事です。
「わが身をつねって人の痛みを知れ」ということわざが
あるように、他人の痛みというのは究極の所では、
自分が同じ病を経験したか、または経験してみなければ
分からないものなのです。
こればかりは痛みを感じている人にしか分からない事で、
痛みがヒドイ病気に関する医師の理解をさまたげていました。
しかし、近年の研究により身体的な痛みが脳に明確な
「痕跡」を残す事が分かりそれが特殊なfMRIを使用して、
それを映像化する事が出来るようになりました。
つまり、患者の体の中で起こる痛みの程度をビジュアルとして
医師が確認できるようになったという事なのです。
健康な被験者に痛みを感じる程度の熱を受けさせた所、fMRIで検知できる脳活動パターンが生じた。
今回の研究では、合計114人の若くて健康な成人が
実験に参加、研究チームはまず、被験者の腕に痛みを
感じるレベルの熱を、腕に当てた時に脳に生じる確実な
痛みの跡をfMRIで検知できる事を突き止めました。
この神経学的痕跡により被験者の主観的な痛みの程度を
90%の精度で予測する事が出来たそうです。
この実験によれば、あらかじめ予想した痛みや回想による
痛みよりも脳の反応による痛みは強い事が分かっています。
「これ位だろうなー」という予測よりも実際の痛みの方が
強いというのは、今後の痛みを伴う治療を行うのに貴重な
データになりそうです。
また、身体的な痛みではありませんが、被験者の一人に
最近別れた恋人の写真を見せた所、身体的な痛みに
反応する部分に反応が見られました。
まさに「スィートペイン」ですが、これは熱により生じた
脳の痛みの痕跡(こんせき)とは、全く違う所に
発生したそうです。
これにより、失恋の痛みと身体的な痛みは全く別の部分が
反応している事が分かりました。
傷心が、本当に痛みとして、脳に跡を残しているなんて、
面白いとは思いませんか?
脳卒中などの後遺症で言語に傷害のある人に有効な技術
研究を率いたアメリカコロラド大学の準教授Tor Wager氏は、
「この研究は患者の嘘を見抜く為に使用するのではない」と
強調しています。
アメリカニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター助教授の
Jing Wang氏は、今回の研究には関与していませんが、
Wager氏の意見に同意する一方で、「客観的な評価は多くの
情報を得る為に有用である」とコメントしています。
例えば、脳卒中後の患者は言語に傷害が残り、患者が上手く
痛みを伝えられない場合があります。
また、精神疾患がある患者の場合には、本人の痛みに対する
訴えは充分には信用できない場合がありますし、子供や
幼児の場合には、痛みというものを上手く伝えられないという
ケースもあり、今回の痛みを映像化するfMRIの技術は、
客観的評価として、本人の報告を補うものになると、Wager氏と
Wang氏は述べています。
研究は、まだ初期段階でさらなる改良が必要
ですが、この痛みを映像化する技術は、まだ研究についた
ばかりで、高額なfMRIスキャンを普及させるには、
さらに実験を進めて研究のデータを積み重ねる必要があります。
Wager氏らは、すでに別の種類の痛みでもこの神経学的痕跡が
見られるのかどうかに関する研究を開始しています。
しかし、痛みには炎症から神経の損傷まで様々な原因があると
指摘し、特に慢性のとう痛は極めて複雑であるそうです。
どちらにしても、このような研究は、痛みというものを
理解する上で非常に有効であり、とう痛管理の向上に
貢献できるものとして大いに期待されています。