海外旅行シーズンを前に知っておきたいこと。「狂犬病」は致死率約100%
死亡率100%、恐怖の狂犬病ウィルスの広がりを解明
東北大学は4月17日、フィリピンの狂犬病ウィルスの遺伝的
多様性とその地理的分布を明らかにしたと発表しました。
狂犬病とは、発症すればほぼ100%の致死率の病気で、世界でも
狂犬病を征圧しているのは、日本を含めて数カ国のみです。
狂犬病はウィルス性の病原菌で、哺乳類ならばすべてに感染の
危険があります。
人間にも感染し致死率は95%という猛毒
狂犬病は、狂犬病ウィルスに感染した犬などにかまれたり、傷口や
目や唇など粘膜(ねんまく)をなめられたりする事で発症します。
感染すると、最初は風邪をひいたような症状や、全身のだるさ、
精神不安、かまれた部分のかゆみがおき、次には、水を恐れる症状が
出てきます。
水を恐れるのは水分をとると、筋肉がけいれんを起こすように
なる為です。
そればかりではなく、神経が過敏になり風を恐れたり、光に過敏に
なり、暗闇に隠れてしまったりもします。
最終的には、全身がけいれんを起こして昏睡状態に陥り、呼吸困難に
なって死亡します。
狂犬病ウィルスは、咬まれた場所によって発症時期が異なり、頭に
近い場所ほどに発症が早いという特徴があります。
潜伏期間は1~2週間から、最長では2年以上という場合もあります。
上記のように、発病してしまうと致死率は95%以上、有効な
治療法はありません。
日本では、根絶したが、海外では、今も猛威をふるう狂犬病ウィルス
狂犬病ウィルスは、日本でこそ聞きませんが、南極をのぞく全ての
大陸で感染が確認されています。
流行地域はアジア、南米、アフリカで、毎年5万人が死亡しています。
厚生労働省が指定している狂犬病清浄地域は、イギリス、アイルランド、
ノルウェー、スウェーデン、台湾、ハワイ、グァム、フィジー諸島、
オーストラリア、ニュージーランドと全体としては非常に少なく、
台湾やフィジー諸島、キプロスに関しては、狂犬病は発生していない
ものの、輸入検疫制度は充分ではないという懸念を出しています。
フィリピンでも毎年200~300例の狂犬病症例が
今回東北大は、毎年200~300例の狂犬病症例があるフィリピン
国内の動物衛生研究所と協力し、同国各地の狂犬病動物検体を収集、
235検体の狂犬病ウィルスG遺伝子の解析を実施しました。
その結果フィリピンにおける狂犬病株はいずれも「Asian2b」という
グループに属しそれは中国株(Asian2a)から派生したものである事、
また、フィリピン株の中ではメジャーグループと2つのマイナー
グループに分けられる事が判明しました。
フィリピン政府は2020年までには、狂犬病ウィルスの撲滅
(ぼくめつ)を宣言しており、狂犬病ワクチンの接種に熱心に
取り組んでいます。
海外からのペットの輸入で身近になる狂犬病の危険
日本は、狂犬病清浄国ですが、海外からのペットからの輸入が
狂犬病リスクを再燃させる可能性が高くなっています。
海外では、2003年にボリビアから輸入されたハムスターが
ペルーで人をかんで、狂犬病が発生した事例があります。
日本に輸入されるハムスターの数は年間50万匹にものぼるので
対策の声が上がっています。
また、狂犬病リスク国のロシアからの野良犬が北海道に渡ってくる
事例もあり、危機管理上の問題になっています。
狂犬病感染動物にかまれたら、まず消毒
狂犬病は発病したらほぼ助かりません。
ですから、動物にかまれた場合にはまず傷口を水で洗い
エタノールなどで消毒しましょう。
狂犬病ウィルスは、弱い病原体なので、早期の対処により
ウィルスが侵入しなければ助かる可能性があります。
対処後は速やかに病院へ出向き狂犬病ワクチンを打ちましょう。
狂犬病=犬が持っているウィルスとは限りません。
何であれ、動物に咬まれた場合、特に海外では警戒してし過ぎる
事はありません。