お母さんに抱っこされた赤ちゃんがリラックスして泣きやむ理由を解明する
理化学研究所が抱いて歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みを解明
赤ちゃんは、お母さんに抱っこされると落ち着くというのは、
お母さんなら誰でも経験として知っている事ですよね?
しかし、赤ちゃんが抱っこされる事で
どうしてリラックスするかは、解明されていませんでした。
この、抱っこと赤ちゃんのリラックスの関係を、
理化学研究所の野依良治理事長と
各機関の共同研究が明らかにしました。
この抱っこによって、赤ちゃんがリラックスする
という現象は、ヒトばかりでなく、
ライオンやリスのような哺乳類全般に見られます。
哺乳類全般に見られる「輸送反応」
ライオンや猫は子供を移動させる際に、
子供を口にくわえて運びます。
その際に子供は丸くなって運ばれやすい態勢を取ります。
これは輸送反応と言われていて、哺乳類の子供は、
首の後ろを咬まれると、
暴れて落ちてしまう事を防ぐ為におとなしくなるのです。
マウスによる反応を見ると、
離乳前の子マウスの首の後ろをつまみあげると、
人間の赤ちゃんと同様に、
自発運動や心拍数が低下する事が分かりました。
これを輸送行動に対応する愛着行動と言います。
それに子マウスには、
超音波で母親を呼ぶ習性がありますが、
この超音波も首の後ろをつまみ上げる事で
10分の1に低下しました。
これは、
人間の赤ちゃんが泣きやむのに似た反応です。
お母さんが抱っこして歩くと、赤ちゃんはリラックスする
これらの哺乳類の輸送反応は、
人間の赤ちゃんにもあるかどうかを、
理化学研究所及び共同研究チームは実験しました。
実験は、生後6か月以内のヒトの赤ちゃんと、
その母親12組の協力を得て、
母親に赤ちゃんを腕に抱いた状態で、約30秒毎に、
「座る・立って歩く」を繰り返してもらいました。
この時の赤ちゃんの行動の生理的反応を
心電図で記録した所、
母親が座っている時に比べて歩いている時は、
赤ちゃんの泣く量が約10分の1と
自発運動の量が約5分の1に低下していました。
心拍数は、お母さんが歩き始めた3秒後からは、
明らかな低下が見られました。
この研究結果をみると、
マウスの子供と人間の赤ちゃんでは、
輸送行動を行っている時に
同様にリラックスする事が分かります。
輸送行動は、子供と母親の共同行動
哺乳類にとっては、親子関係は最も大切で、
一番基本になる社会関係です。
というのも、
哺乳類は未熟な状態で生まれるからです。
卵から生まれる生き物は、
餌を親に依存する事を除いては、
全ての行動を自主的に行う事が出来ます。
しかし、哺乳類は、
自主的に動く事も出来ないばかりか、
24時間親がついていないと、
生命に関わる生き物もいます。
そこで、子供の側でも自分の身を守る為に、
親の行動に合わせる「愛着行動」を通して、
親に協力していると考えられています。
ここで表れてるのが
「輸送反応」というアクションなのです。
輸送行動を通して、育児の負担を軽くするメカニズムの研究に貢献
お母さんにとって、
育児は大変なストレスがかかる仕事です。
特に泣きやまない赤ちゃんに対応するのは
強いストレスになります。
その時に、哺乳類全般に共通する輸送反応そして、
愛着行動を理解していれば、
赤ちゃんに子育てに協力してもらう事が出来ます。
これまで経験によって
継承されてきた部分のみではなく、
育児に科学の光を当てる事によって、
子育ての負担を軽減する取り組みが行われているのです。
脳の機能障害により、愛着行動が起きにくい事の研究も
また、研究によって、
マウスの子供の脳に機能障害が起きている場合は、
輸送反応に対する愛着行動が、
起きにくいという事も解明されてきています。
これは、自閉症やアスペルガー症候群のような
脳の機能に障害を持つ赤ちゃんに対する子育てにも
対応できないかと考えられています。