免疫力を高め自然治癒力アップ!サナダ虫から学んだ今後の医療の方向性とは
免疫と病原菌の不思議な関係
現代の日本では、花粉症やアトピーのような、
免疫の過剰反応を原因とする症状が増加しています。
従来、免疫とは、外から入ってくる異物を体から排除しようとする
大切な働きですが、全てがクリーンになってしまった現在、
免疫は、外からの異物に対応するのに慣れていないので、
それが異物への過剰反応に関係しているのかも知れません。
大昔の世界にあった、寄生虫と川魚と人間の共生関係
話は変わりますが、サナダ虫という生き物をご存じですか?
真田ヒモに似ているので名付けられた寄生虫です。
今では馴染みもありませんが、江戸時代の頃までは、
多くの日本人のお腹にいるポピュラーな寄生虫だったのです。
水を浄化して流すという施設が無かった昔は、
川沿いに住んでいる人間の排泄物は全て川に流されていました。
この中には、サナダ虫の卵もありました。
この卵は、川魚に食べられて、その腹の中で成長します。
その魚を人間が釣って食べると、またサナダ虫が人間のお腹に入り、
そこで栄養分を吸い取り、卵を産みつけます。
人間のお腹に入ったサナダ虫の卵は便として排出されて、
また川に流されて、川魚が食べ、それを人間が釣って食べる。
こうして、サナダ虫、川魚、人間の間では、
奇妙な共生関係が存在していたのです。
悪い事ばかりではない、寄生虫との共生関係
体内に寄生虫がいると聞くと、寒気がする人が多いと思いますが、
実は寄生虫が体内にいるのはデメリットばかりではありません。
寄生虫が体内にいると、体の免疫機能が強化されて
病気全体に強くなり、健康になるという実験結果もあります。
寄生虫博士として知られている藤田紘一郎教授は、
「現代で花粉症患者が増加しているのは、サナダ虫が体内に居なくなった為だ」
と主張しています。
そして、サナダ虫の体内からは花粉症の免疫力を高める成分も出ている
というデータもあります。
ただ、サナダ虫は体内に取り込んだからと言って
簡単に寄生するような寄生虫ではないようです。
もちろん、寄生虫ですから、
花粉症を治療するのに飲むというのはオススメできません。
海外の事例では、サナダ虫をお腹に入れて下痢を起こしたり
貧血になったりというケースも存在し個人差も大きいようです。
マラセチア真菌から免疫を高める物質を発見
さて、免疫つながりの健康ニュースを一つ紹介しましょう。
4月17日
九州大学・生体防御医学研究所の山崎教授らの研究グループは、
米国の「セル・ホスト&マイクローブ」電子版に、
病原性の菌の中から体の免疫力を高める事につながる物質を特定したと発表しました。
この病原菌とは、アトピーや敗血症の原因ともなる怖い病原体
マラセチア真菌です。
体の免疫機能がマラセチア真菌に対して
免疫機能を高める事は以前から知られていました。
しかし、複数ある真菌のどの物質に対して免疫が反応しているのかが、
現在まで分からなかったのです。
山崎教授のチームは、このマラセチア真菌の中の
「糖たんぱく質」と「糖脂質」に免疫が反応しているのを突きとめたのです。
実際に、真菌から取り出した「糖たんぱく質」と「糖脂質」を
免疫細胞に与えると活動が活性化したそうです。
これを用いれば、副作用が少なく、
効果の高いワクチンの開発につながると期待されています。
病原体を利用して、毒を以て毒を制す
このように、人間が従来持っている免疫機能を上手く利用して、
病気を撃退しようという試みは、各分野で行われています。
薬の効き目を強くすると、
病原体もそれに合わせて自分を強くして対抗し、
結果、患者の体への負担が重くなってしまうのです。
昔、サナダ虫のような寄生虫と共生していた事に学んで、
体の自然治癒力を高めるのが、今後の医療では主流になりそうですね。