筋ジストロフィーや骨粗しょう症の治療の救世主となるか!ミオスタチン関連筋肉肥大の研究に期待
ヘラクレスや金太郎は実在したのか!?
筋肉隆々のたくましい男性の事を、
ギリシャ神話の英雄になぞらえて「ヘラクレスのようだ」
なんて形容する事がありますよね。
日本でも、幼少時に熊と相撲をとったという伝説の武将「坂田金時」や、
矢を放ち敵船を沈没させた剛力の「源為朝」の伝説が残されています。
でも、これらの事は、優れた能力を持つ英雄の能力を称える為に、
後世の人が創作したフィクションだと考えられています。
ですが、近年、これらの超人は実在できたのではないか?
という可能性が出てきたのです。
筋肉量が、通常の1.5倍から2倍、ミオスタチン関連筋肉肥大
彼らの存在の可能性を示唆するもの、
それがミオスタチン関連筋肉肥大です。
この病気は染色体の異常で、
筋肉の成長を抑制するたんぱく質ミオスタチンが変異している
あるいは、ミオスタチンは生成されても、
筋細胞がこれを受容しない場合に起きる病気です。
1990年代に牛とマウスで発見されたミオスタチン関連筋肉肥大
ミオスタチン関連筋肉肥大の存在が科学的に報告されたのは、
1990年代後半のことです。
1997年にボルティモアのジョン・ホプキンス大学の
研究者達がベルギーブルー種の畜牛の遺伝子を調査した所、
ミオスタチンを生成する遺伝子に変異がある事が判明しました。
さらに、マウスを使った実験でミオスタチン遺伝子を非活性化した所、
マウスの筋肉量を増加させる事に成功しています。
2000年にドイツで通常の筋肉量の2倍の筋肉を持つ赤ちゃんを発見
当初は、畜牛やマウスにしか発見されなかったミオスタチン関連筋肉肥大ですが、
2000年にはドイツの赤ちゃんで発見されています。
その後、ジョン・ホプキンス大学の調査により、
ミオスタチン関連筋肉肥大は、非常に稀な病気ですが、
人間でも世界中に、100名程の存在が確認されるに至りました。
赤ちゃんでも腹筋が割れるミオスタチン関連筋肉肥大
アメリカ、ミシガン州に住むリアム・フックストラという幼児は、
このミオスタチン関連筋肉肥大の患者です。
その筋肉量は通常の幼児の40%も多く、生後2日目には、
体を支えられると両足で立つ事が出来たと言います。
生後5か月の頃からは、両手を持ってあげれば、
十字懸垂の姿勢を取るようになり、
8カ月では棒にぶら下がり懸垂が出来たと言います。
この、驚異的な身体能力は、おとぎ話に伝わる金太郎のような
怪童伝説をほうふつとさせるのではないでしょうか?
良い事ばかりではない、ミオスタチン関連筋肉肥大
しかし、このミオスタチン関連筋肉肥大、
歴とした病気である為に当人には辛い事も起こります。
特に幼児期は、脳の発達の為に脂肪が必要なのですが、
このミオスタチン関連筋肉肥大ではほとんどの脂肪が筋肉に持っていかれます。
このままにしておくと、脳に脂肪が足りなくなり、
機能障害が起こる可能性があります。
その為にリアムは、幼児にも関わらず、
一日に6回も食事を摂らなければいけません。
それも山盛りの食事です。
古代にも存在していたミオスタチン関連筋肉肥大
恐らく古代にも、リアムのような超人は存在していたのでしょう。
しかし、食糧事情の悪い古代では、仮に超人として生まれても、
英雄と呼ばれるような存在にまで成長する事は難しかったのではないでしょうか?
ただ、貴族や大金持ちの家に生まれた、
ミオスタチン関連筋肉肥大の患者だけが、食糧事情の問題を克服して、
超人や神として、多くの人々の記憶に残る存在になり、
伝説や神話になっていったのではないでしょうか?
筋ジストロフィーや骨粗しょう症の治療に利用できるかも知れないと期待される
ミオスタチン関連筋肉肥大は、生涯を通して筋肉が発達し続ける病気ですが、
これは原因不明で筋力が衰える筋ジストロフィーや骨粗しょう症のような
病気を解明するヒントになるかも知れないと現在研究が進んでいます。