病院内外の騒音は入院患者の治療や睡眠の質を低下させ有害。自然治癒力を妨害する騒音は減らす工夫が必要。
実は、けっこう、うるさい病院内の騒音
入院した経験がある方は、病院内では、色々な音が
耳に残ってなかなか寝付けないという事はありませんか?
実際に入院患者の多くは、院内の製氷機の音や廊下の話し声、
病院の外の交通騒音などで寝付けけず睡眠がさまたげられている
という事が新しい研究で明らかになりました。
入院患者の治療の質を低下させる院内の騒音
最近の調査により、入院患者のアンケートでは、
治療の質に悪影響を及ぼす大きな原因として、
騒音を挙げる人が多い事が分かりました。
アメリカ・ハーバード大学医学部助教授/
アメリカ・ブリンガム・アンド・ウィメンズ病院の
睡眠内科のOrfeu Buxton氏は、
どのようなタイプの騒音が入院患者にとって最も
問題になるかを調査する為に健常な若い男女を
睡眠実験室で3晩過ごさせました。
ここでは、騒音の録音を聞かせずに正常な睡眠をとらせた後、
今度は全員に典型的な病院の音にさらされた状態で
眠ってもらいます。
病院の中にあるたくさんの隠れた騒音
内部騒音は、廊下を移動する台車、製氷機、
スタッフの会話、点滴静注のアラーム、電話の呼び出し音、
というモノがメイン、
一方の外部騒音は、道路の往来、およびヘリコプターの通過でした。
試験中に被験者の睡眠のパターンと心拍を
モニターリングした結果、予測の通りに騒音レベルが上がると
睡眠障害も大きくなりました。
音は小さいが睡眠を妨害する電子音
しかし、すべての騒音が同様に睡眠障害を引き起こす
ばかりではなく、病院特有の電子機器音のほうが、
話声や交通騒音より睡眠を妨害しました。
また、通常の騒音は、一瞬であっても、
急激な心拍数の上昇をもたらしました。
どちらも深い睡眠時と浅い睡眠時に起こりましたが、
浅い睡眠時に強く影響が出る事がはっきりしています。
実際に病院で入院している患者は、今回の被験者よりも
年齢が高いのが普通で、その場合には騒音による睡眠障害は、
もっと大きくなります。
騒音は睡眠の質に影響を与え血圧上昇などの
多くの重い健康障害を促進させ、悪化させる可能性がありますから、
問題は、たかが騒音という枠には、留まらない程に重大です。
世界保健機関の規定30デシベルを上回りチェ―ンソーレベルも
世界保健機関(WHO)のすすめでは、
院内の騒音レベルは30デシベルとされていますが、
実際には、これを上回る50デシベルの病院も珍しくなく、
さらには一時的に80デシベルという騒音が出る病院もあります。
80デシベルは、チェ―ンソーの騒音と同じで、
早急な改善が必要と指摘されています。
病院内で起きる騒音は、通常の何倍も有害であるという結論
Buxton氏は、「騒音が睡眠をさまたげる事は誰でも知っているが、
病院では非常に大きな問題になる。患者周辺でひっきりなしに
起きる騒音は、それぞれが患者の睡眠をさまたげる。」
と指摘し、複数の騒音にさらされると、
患者の心拍数は1分間に4回~10回早まることがあり
回復を遅らせる事になると言います。
騒音レベルを下げる事が出来れば、質のよい睡眠により
自然治癒力が高まり、入院期間の短縮や
おそらく再入院率の低下につながるのです。
ICUではより高い騒音レベル
アメリカ・テキサス大学医学部のガルベストン校の
Gulshan Sharma博士は、「確かにICU(集中治療室)では睡眠不足や、
睡眠障害が非常に多い。よりよい技術を用いる事で、
様々なアラーム音から患者を遠ざけられる」とのべています。
ICUと言えば、特に病気の状態が重い患者が入る場所ですが、
そこでさえ、電子音による睡眠障害があるのですね。
病院での治療は、もちろん重要ですが、
最期に病気を治すのは、患者の自然治癒力です。
その自然治癒力を妨害してしまうような院内及び院外の騒音は、
極力減らしていけるようにする工夫が必要です。