貧乏と免疫力には関係があった!老化を促進させ、意欲を低下させる免疫力の力とは
貧乏は免疫系統の過剰反応という学説
貧乏は好きですか?と聞かれて好きと答える方は
あまりいらっしゃらないと思います。
もちろん、大金持ちにも程度があるのでしょうが、
せめて、食べるには困らない位には富裕になりたいですよね。
日本では、以前は、努力する事で貧乏は克服する事が出来、
裕福になれるという考えが支配的でした。
最近は、一億総中流と呼ばれた日本社会も、
格差拡大の傾向がありますが、
それでも、それが遺伝によると考える人はいません。
ですが、日本以上の格差社会である英国スコットランドでは、
貧乏は生物学的に遺伝してきたという研究結果が発表されているのです。
スコットランドにある地域による平均寿命格差
スコットランドは西側諸国において、
健康を害している人がもっとも多い地域の一つです。
その中でも、心臓病、肥満、ガン、糖尿病など
慢性疾患にかかる確率が驚く程に高いのが特徴です。
しかし、同じスコットランド内でも
平均寿命には大きな格差が存在しています。
例えば、貧困層が多く住むグラスゴーのイーストエンド地区の
男性の平均寿命が64歳であるのに対し、
中産階級が多いオークニー州の男性の平均寿命は
82歳に到達しているという具合です。
貧乏人は、常に免疫系統がフル稼働し早く老化するという説
これだけを聞くと、貧困層は病気をしても、高度な医療が受けられない、
もしくは食生活や生活習慣に問題があり平均寿命が短い、
と日本人の感覚では考えがちですよね?
しかし、この論文を発表したグラスゴー市民健康センターの研究監督、
生科学者のクリス・パッカード博士は、こう主張しています。
「不健康で所得が少ない人達は、免疫系が常に迎撃態勢で活動しており、
慢性的な炎症を患っているのと同じ状態で生活している、
これが、老化を早めて、意欲を低下させて貧困から抜け出せない原因になっている。」
博士の主張によれば、
免疫系ではサイトカインと呼ばれる化学物質を利用して、
バクテリア迎撃態勢の指令を出します。
しかし、このサイトカインが活発に動くと、
老化防止に必要な体内のスペアDNAが欠乏して
細胞老化が促進して老化が早まるそうです。
また、サイトカインが活発に動くと脳にも悪影響があり、
感動や感激といった意欲向上に繋がる感情が鈍くなるのだとか・・
実際に博士が、
イーストエンド地区の住人の血中のサイトカインを測定すると、
それ以外の地域の住人より濃度は高かったそうです。
疫病から生き残った人が貧乏になるという皮肉
つまり、イーストエンド地区の住民は、
免疫系統が常に迎撃態勢である為に、
体に負担がかかって老化が促進され、
同時に、副作用で脳が感動を感じるような感度が落ちている為に、
人生を改善しようとする意欲が低下している。
そのせいで、早く歳をとり、人生を改善しようとする意欲も湧かず、
貧困層から抜けだせないと博士は主張するのです。
ですが、イーストエンド地区は、19世紀から20世紀初頭の
ヴィクトリア期に、はしかが大流行し死者が続出した時期、
この、はしかの脅威から生き残った人々が住みついた地区
だと言われているのです。
サイトカインが活発に働くと、
幼児期から少年期には病気にかかりにくいというメリットがあります。
しかし、成人すると、その高すぎる免疫が悪い方向に働き、
老化を促進させ、意欲を低下させるのです。
つまり、イーストエンド地区の住民は、
病気に勝ち抜いた勝ち組でありながら、
その強すぎる免疫がマイナスに働いてしまい、
今度は、貧乏になってしまったという皮肉な状態にあるわけです。
もちろん、クリス・パッカード博士の主張には、問題点も多く、
全てが解明された訳ではありません。
しかし、貧乏と免疫力の強さが関係しているかもし知れないというのは、
斬新な視点であるとは言えるでしょう。