不安と恐怖の違いを知る!先が見えないと不安やストレスが増大する理由とは
不安と恐怖は、別々の脳の部位から来ている?
不安と恐怖は、よく並べて使われる言葉ですが、
しかしこの「不安」と「恐怖」、
実は脳の中で別々の経路で造られているのだそうです。
それを発見したのは、大阪バイオサイエンス研究所の
中西重忠所長(分子神経科学)らのチームで、
4月18日のアメリカの科学誌「ニューロン」電子版に掲載されました。
不安と恐怖の感情はいずれも中脳にある手綱核(たづなかく)
と呼ばれる部位が関係しているとされていますが詳細は不明でした。
その為に、長らく、
恐怖と不安は同じような感情のように考えられてきましたが、
この手綱核からの信号を仲西所長の研究チームは、
マウスを使った実験で解明しました。
マウスを使った実験で解明された不安と恐怖の造られる場所
研究チームはマウスを用いて実験を開始しました。
まず、マウスの側にキラキラ光るガラス玉を置いて不安を与え、
足場に強い電流を流す事で、マウスに恐怖を覚えさせます。
そして、それぞれの場合に脳内のどの神経回路が働くかを調べました。
その結果、不安は脳内の三角中隔核、恐怖は前交連床核という部位を
経由して手綱核に伝わり感情が表れる事が分かりました。
岡本仁・理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長は、
このようなコメントをしています。
「今回分かった二つの回路の異常が、不安傷害など精神疾患の原因の
一つかも知れない、治療法開発の手掛かりとなる可能性がある」
恐怖と不安は、将来の見通しが効かない現代社会で、
鬱のような精神障害の原因になっていると考えられています。
今回の仲西教授の研究チームの実験が、
不安と恐怖のメカニズムを解明するのに役立つ事を期待したいですね。
不安という気持ちとストレスの関係
よく仕事が多忙を極めると、人間は不安を覚えてストレスを感じ、
体調を崩してしまうというケースがあります。
しかし、非常に多忙である事は、
必ずしも不安やストレスの原因にはならないようです。
経営者の責任が非常に重いストレス社会であるアメリカで、
バリバリと多忙な仕事をこなしている会社経営者の健康状態を調べた結果、
大変なハードスケジュールをこなしているにも関わらず、
健康に異常は無かったそうです。
仕事についても、ハードな仕事をやりがいがあるととらえていて、
精神的な負担も見られませんでした。
ところが、会社の経営が傾いたり、
人間関係のトラブルが発生すると、この状態は一変します。
経営者は、強い不安感とストレスを感じ、落ち着きが無くなり、
健康面でも血圧の上昇や胃潰瘍などが見られるようになりました。
先行きが見通せないという事が不安感とストレスを増大させる
同じような状況は、猿の社会でも見られたそうです。
猿は一匹のボスが、群れのメスと食糧を独占する社会です。
猿山のボス猿は権力が盤石で、支配が行き届いている時は、
多忙にも関わらず健康状態に異常は見られませんでした。
しかし、ボスの権力が揺らいできて、若い猿の挑戦が続いたり、
メスや食糧の独占が崩れるとボスの健康状態にも異常が出たのです。
ボス猿が、ボスの地位を追われると、
若い猿による戦国時代が出現しますが、
権力が安定するまでは、どのボス猿にも、
ストレスが発生している事が確認されたのです。
これから分かるのは、人間であれ、猿であれ、
自分を取り巻く状態が安定していると、
超多忙な生活であっても、これをやりがいと感じ、
反対に自分を奮い立たせられます。
しかし、自分の周囲が不安定になると、
たちまちの内に将来への不安を感じてしまい、
精神面でも健康にも悪影響が出てしまうのです。
自分が思っている程悪い事は起きないという事を思い起こす
一度不安に襲われると、人間はすべてにおいて不安を覚え、
状態をより悪くとらえてしまおうとします。
しかし、思い起こして見るとこれまでの不安も、
実際に現実になったのはほとんど無いという事に思い当たるでしょう。
「大丈夫、そんなに悪い事は起こらない」
そう考えて必要以上に不安を抱え込まない事が大切です。