罪の深さは計り知れない、話題性が先行している『現代のベートーヴェン事件』
話題性が先行しているが大問題を孕む事件
現代のベートーヴェンこと
佐村河内守氏の起こしたゴーストライター事件は、
多方面に大きな衝撃を与えました。
ドラマのようなゴーストライターによる告白、
登場人物のキャラクターの濃さも相まって、
事件は日々センセーショナルに報じられ続けています。
しかしこの件は、
決して面白半分に扱ってはいけない
繊細な問題も孕んでいます。
それは、障害者に対する新たな偏見や
無理解を生み出しかねないということ。
はっきりと見て取ることのできない障害を
抱えている人は、たくさんいます。
中には、それが重度の障害であっても、
周囲からは全くの健常者に見える場合もあり、
そのような人たちに対する風当たりを
強くしたのかもしれないという点で、
この事件の当事者たちは
罪深いことをしでかしたのだと言わざるを得ません。
なぜこのような事件は起こりえたのか?
その一方で、少なからず存在する障害の詐称。
障害者を騙り不当に手当てを受給する
不心得者を生んだ障害認定の甘さに、
図らずも一石を投じることとなりました。
この問題を受け、先の国会で厚生労働大臣は、
聴覚障害認定のあり方について見直しを検討する
との考えを明らかにしました。
もちろん、
現在も障害者手帳を不正取得した場合の罰則規定は、
法で定められています。
しかし聴覚障害の手帳は、
医師の診断書などを市町村役場の窓口に
提出して申請するのみの、書類審査で行われるため、
行政側が障害の内容について完全に把握するのが
困難とされます。
佐村河内氏の所持していたのは、
補聴器を使用しても聞こえない
「全聾」であると判断された人に発行される、
聴覚障害2級の手帳でした。
聴力だけでなく脳波の検査が必要
聴覚の検査は、何種類かの高さの音を聴かせ、
本来であればその時の脳波を測定する
「聴性脳幹反応(ABR)検査」を行うべきなのですが
そのための機器が高価であり、
導入されている医療機関が少ないことや、
診断書の発行に1万円前後の費用がかかり、
申請者の負担となることから、
実際には脳波までは計測しないことが多かったのです。
しかし、今後はもう
このままにはしておけないということで、
障害者手帳についての検討会を、
専門医らを交えて立ち上げ、
その認定方法などを見直す運びとなりました。
しかし、実際にABR検査が義務づけられた場合に、
申請を行う障害者のみならず、
医療機関にも大きな負担が生じることとなり、
障害者への助成や支援の足かせとなっていきそうです。