高齢化社会の問題。アルツハイマー病による認知症とどう向き合っていけばよいのか。
80歳以上では、7人に1人が認知症を発症するという現実
日本は、世界一の長寿大国です。
男性の平均寿命は80歳、女性の平均寿命は86歳、
男女全体では83歳にもなります。
しかし、その長寿を喜んでばかりもいられない統計が存在します。
それが認知症の発症率です。
認知症の発症率は、当然の事ながら、
年齢が上がるにつれて上昇していきます。
65歳~69歳の認知症発症率は1・5%ですが、
70歳~74歳は3.6%と2倍以上になります。
さらに75歳~79歳は7.1%と更に倍、
80歳~84歳は14.6%で、
85歳以上になると、27.3%に達してしまいます。
つまり、80歳以上を総計すると、
7人に1人は、認知症を発症している事になるのです。
超高齢化社会は、増加する認知症をどのように抑えていくか?
という難題を、いかにして解決していくかという社会でもあるのです。
物忘れと認知症はどう違うの?
年齢を重ねると、誰でも物忘れが多くなる傾向があります。
しかし、この物忘れと認知症は全くの別物です。
認知症とは、正常に発達した知的機能や認知機能などが
脳の委縮や脳血管障害によって大きく低下してしまう症状の事です。
物忘れのみではなく、理解力や判断力の障害が発生し、
社会活動や日常生活にも困難を来してしまいます。
認知症の物忘れは、例えば、食事した事自体を忘れるというように、
体験の全てを忘れてしまうという特徴があります。
今日の夕食を忘れてしまうというような物忘れは、
普通の物忘れだと言えるでしょう。
これから必要になる、認知症の進行を遅らせる薬
認知症の原因になる病気には、アルツハイマー病や
レビー小体病などの脳神経細胞の変性によるもの、
脳梗塞や脳出血などの後遺症によるものなど複数がありますが、
その7割を占めるのがアルツハイマー病です。
アルツハイマー病は、現在の所、病気の原因や発病メカニズムの
全容は解明されていませんし、決定的な治療方法もありません。
従って、治療方法というものは確率されておらず、
薬は病気の進行を遅らせるものが主体になっています。
記憶機能の低下を防ぐアリセプト
アルツハイマー病の進行を防ぐ薬の中には、
アリセプトがあります。
この薬は、記憶機能の低下を防げる薬です。
人間の脳は140億個の神経細胞の塊で構成されていて、
細胞から細胞へ神経伝達物質が伝達される事で動いています。
細胞と細胞は連結している訳ではなく、
シナプスという隙間が空いています。
神経伝達物質は、この隙間を飛んでいるのです。
神経伝達物質の種類には、アセチルコリンやセロトニン、
ドーパミンなどの種類が存在しています。
この中のアセチルコリンは、人間の記憶をつかさどる物質で、
アルツハイマー病患者はこのアセチルコリンが減少しているのです。
加えて、患者の脳内では、このアセチルコリンが
細胞に伝達される前に分解されて、届かないという事も起きています。
アセチルコリンエステラーゼは、このアセチルコリンを
分解してしまう酵素として知られています。
アリセプトは、このアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害して、
アセチルコリンが伝達されるように働くのです。
副作用はあるが、医師の処方を守る事で負担軽減の効果もある対処療法薬
アルツハイマー病の薬には、アリセプト以外にも、
レミニール、イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ、メマリー等があります。
これらの薬を服用する事で、アルツハイマー病の進行を
遅らせる事が出来、家族の介護の負担も改善されます。
しかし、これらの薬は、
避けられない問題として副作用が存在しています。
効き目にも個人差があり、食欲不振や嘔吐、激越(げきえつ)や
攻撃性の増加というような副作用もありますので安易には使用できません。
薬の効果もそれぞれなので、
患者さんに合った薬を根気強く探してみるという事が必要になるでしょう。
医学の進歩は日進月歩なので、対処療法薬を使う事で、
新しい治療法への道も開けるかも知れません。